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プロローグ



あなたはご存知?
「ローザネーラ」を。
“呪われた姫”だけが咲かせることのできる闇色の薔薇。
黒くて不気味で、不幸を呼ぶ花と言われているわ。

ある者は言った。
「美しい漆黒の毛並みを持った姫が育てると、黒く咲いてしまう」と。
ある者は言った。
「血色の瞳を持った女性は、赤い薔薇を闇色に染め上げてしまう」と。
ある者は言った。
「“赤”は「血」を意味し、“黒”は「死」を意味する」と。

私の伝説は、数百年前に誕生した。
私だって、両親という名の存在から生まれた。
けれど、両親は死んだ。私を独り、取り残して。
お父様は処刑され、お母様は火炙りにされた。

今でも憶えてる。

美しい満月の夜だった。
闇が落ちた広場で、赤々と燃立つ炎に焼かれ、灰となり塵となった母。
私は瞳に涙をいっぱい溜めて、ただじっとその光景を見ているしかなかった。
母は泣きながら、私に言った。

「逃げなさい。貴女だけでも、生き延びるのよ」

その後の記憶は、あまりない。
気付いた時には、籠の中にいた。

私の黒い髪は、お母様から。
私の赤い眼は、お母様から。
私の白い肌は、お母様から。
全てを、お母様から受け継いだ。

だから、狙われる。
私は呪われたお姫様。

生きている価値なんてない。
死を求めることすら許されない。
永遠の呪いに蝕まれ、罰を受け続けるだけ。
それが、私の宿命――?

いいえ。
私は。
「  」を手に入れたのよ。