早く高校を卒業して、受験して大学に入って大人になりたいわ。私、勉強が大嫌いなのよね。でもスポーツも嫌いだから、OLとかになってただ書類とか集めたりしてる軽いお仕事をしたいのよね。お母さんにそんなことを言ったら笑われたけど。特にやりたいことないし、夢とかも見つけてない。一応、留年とか低得点とか取りたくないから、ギリギリで合格はしてる
毎日、学校生活で何一つ楽しいことをしていないという悲しい日常に毎度たそがれている。私は“空気”だから、友達も居ない。べつに一人で十分なんだけど、“コイツ”とだけはどーしても離れられないんだよね。

「絵美ー!」

来た。

「今日は先に帰っとく?」

毎週の金曜日、幼馴染の武は野球の部活がある。毎週、同じように武は私にそうやって聞いてくる。

(なんで聞いてくんのさ……)

どうせ「先に帰る」って言っても「えー。待ってくれないのかよ」とかって言って、結局は私を待たせているのに。

「待っとくよ。(しょうがないから)」
「マジで? サンキュー。じゃ、悪いけど待っててくれな」

それだけ言うと、さっさと更衣室に向かった武。

(……腐れ縁ってやつかな)

私の憶えている限りでは、「武くん作ったの、どれ? 私はうさぎさんだよ」「俺? パンダ」って粘土工作でそういう会話をしていたのと、「誰か、武くんを班に入れてあげてくれないかしら」「はーい。ここ空いてるよ」的なこともあったような、なかったような……まあ、そんな幼稚園児の頃を憶えていたりする。小学校は別々になったんだけど、会えないワケじゃなかった。家が近いから、夏休みとかには毎度2人で蝉取りとかしてたし、その他もろもろ。中学も一緒。挙句の果て、高校に入って同じクラスになるなんて。
武は爽やかで優しいから、一部の女子に人気はある。そんな武が気軽に私に話しかけてくるから、周りの女子の視線が高熱を帯びた鉄鋼のように情熱的というね。友達がいないのはそのせいかもしれない。私も積極性ないけど。

「……さて、部活は一時間だから、一時間も待たせられるのか」

部活の時間、この教室は使われていないから、誰かが来ることはない。私は毎週、一人でぽつんとして、時間を潰している。
ま、毎度のごとくだけどね。私はとりあえず一旦、校内を出て、食べ物と飲み物を購入。食って飲んでる間に、武をウチの教室の窓から見物してやろうか。
好物のメロンパンを頬張りながら、窓際の椅子に座る。一番後ろとその手前の席、一番前とその後ろの席、この4点からだと木が遮って野球部の活動が見られない。三番目の席だと、ちょうどいい具合に見える。
そこには、バットを構えている武がピッチャーのボールを待っていた。ピッチャーがボールを投げた瞬間、武の目つきが変わり、すばやくバットを振りかざした。カキーンと、いい音が鳴り響くと、武は咄嗟にバットを捨てて一塁へと走り出した。
見事、グラウンドを走り終えるとセーフの合図が出た。
ジュースを飲みながら、内心で思わずガッツポーズ。
ふと、武がこちらへ身を向けた。

「絵美ー! 俺のバッティング見たー!?」

と、かぶっていたヘルメットを外し、とびきりの笑顔で私を呼んだ。

(相変わらず……恥ずかしい奴)

部員とコーチの前なのに、お構いなしにブンブンと手を振ってくる無邪気なやつ。その背後から先輩らしき人が武の肩を叩いて、私にも聞こえるように「なんだよ武ー。彼女かー?」と冷やかした。その話に乗るように、武は「そうッス。いい女っしょ?」と、ニッコリ笑いながら返した。

「コラァァァー!」

思わず立ち上がって叫んだら、武がひるんだ。それでも武は私に投げキッスというこっ恥ずかしいものを投げつけてから、グラウンドを駆け出した。飛んできたハートが、私の頭や頬にぶつかって弾かれる。
はあっとため息を吐き、頬杖をついた。机の上にあるメロンパンの残りなどに、手を出すことはもうなかった。
割と嫌いじゃない。この席。









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